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あね、空港のよ、フェンスのところにコンクリートのほこらがあるでしよう。あそこにはティージクンガーというカーがあったのよ。だから今もよ、水のご恩(おん)というので、あっちこっちから来て拝(おが)んでいるわけさぁね。 このカーの話は、昔は赤嶺のみんなが知っていた話なんだけどね、そのね、赤嶺勢理客(あかみねじっちゃく)という方がいらっしゃってねぇ、この方はたいへんな武勇(ぶゆう)の方だったのよね。もう、大きな松を引っこ抜いたり、こーんな大きな石を担(かつ)ぎ上げたりとねぇ。もっとも、気の荒い人ではなくて、なんていうかねぇ、勝負を挑(いど)まれて、相手を傷つけたくなくてさぁ、そんなことして見せたのよね。そうしたらね、どんな腕に覚えの武士(ぶし)も勝負はしないで、もう、“ちゃーひんぎ”だったのね。 だけどね、勢理客御主(じっちゃくウシユウ)も普段は漁に行つたり、畑仕事したりしておられたのよね。そんなだから、ある日、鏡水(かがんじ)の崎原(さきばる)のあたりによ、夜から漁に行かれたわけよね。ずっと、漁しておられたもんだから、喉(のど)がかわいてするけども、そのあたりにはカーもなにもないから、水が飲めないのね。すると、どんどん欲しくなるさぁね。そして、ワジワジしてからよ、こんちくしょー、ここにカーがあればと言って、カ一杯に浜に手挙(テイージクン)を突っ込んだら、そこから水がこんこんと湧いたってよう。 それで、ここは勢理客(じっちゃく)が大喜びしたティージクンガーと呼ばれるようになったってよ。 (御主(ウシュウ)とは、敬語で本来は王様のことをいう。ここでは「勢理客様」ということ。) |